ヤマノカケラ
上の写真は改装前のトヨタプリズムビルの屋上広場へと続く大階段。
そして、今回の改装により、緑化された大階段部分の写真。
緑化とは、人工的な環境の上に、さらに人工的に植栽を施すことですが、
たいていの緑化工事は、 ”管理しやすい緑化” が施されることが多い。
つまり、手の掛からない植栽が好まれます。
緑化された施設を今後管理していかなければならないクライアントの立場になれば、あたりまえですよね。
でも、長野の駅を降り立ってすぐ、まちなかでも長野を感じてもらいたい。
そのための緑化は、芝生や単種類の植木や、ましてやセダム類でもない。
いっそ、長野の山を切り取ってきたような植生を再現しちゃおう!
そんな、コンセプトに理解ををしてくださったクライアントのおかげで、
この外構「ヤマノカケラ」は実現しました。
外構設計にはユニット・タネさんの協力を得て、長野のまちなかでは珍しい、そして楽しい緑化になったと思います。
とかく緑化はCO2削減やエコロジーの観点から語られます。
もちろんそれは緑化の理由として大事なことではありますが、
実をいうと、僕はそれだけではない魅力を緑化に求めたかったのです。
それは、”手を掛ける” ”手入れをする” 若しくはその状態を保っている状況が感じられること。
手を掛けたもの、手入れされているものに、多くの人は共感したり感動や安心感を得るものです。
今回は、手入れしなければ維持できない状況をつくりだしているわけですが、
ほんとは、みんなが今まちなかにあるものに、手を掛けて手入れすることだけでも、
まちの魅力は格段にあがるのではないでしょうか。
古くて見向きもされなかった建物を再生するようなリノベーションという手法が、
今、多くの人の共感をえているのも、基本的にはそういうことだと思います。
建築やまちの向こうに、ちゃんと人の手で手入れがされていることが見える、
大切にされていることが感じられる、長野がそんな場所になればいいな。
建てた時が最高の状態で、あとは劣化していくだけの建築ではなくて、
来年が、5年後が、未来を想像することが楽しみになるような建築とその周辺を考えていきたいと思います。