アソビズム横町オフィスは、長野市横町にある使われなくなった鉄骨3階の大きな家具倉庫をリノベした建物です。
第1期工事は、共有スペースと執務室を整備して先ずは使える状態にしました。
第2期工事は、カフェと外断熱を施工して、環境を整えました。
そして第3期工事は「フューチャークラフトルーム」と名付けられた“未来の工作室”をつくりました。
ここには、レーザー加工機や3Dプリンターなど最新の工作機械が導入される予定です。
黒い自動ドアの手前にある黒い直方体は、この特別な部屋に入るためのカードリーダーが仕込まれています。
この直方体の縦、横、高さの比率は1:4:9。「2001年宇宙の旅」という映画に出てくるモノリスの比と同じ。
そんな遊び心も一緒に楽しんでくれるクライアントに感謝です。
出入口の扉は、ガラス(防音ガラス)張りの防音仕様となっていて、グレモン錠を採用しました。
グレモン錠とは、扉に取り付ける金物で、中央のハンドルを回転させると、ロッドが上下に伸びて、枠にある受け座に入り建具を閉鎖位置に固定する金具です。
本来、ドアの内部に納まってしまう代物ですが、スケルトンにして機構が丸見え。建築の見える化。
3Dプリンターやレーザー加工機等の精密な機械が設置される部屋として、新たにガラス張りでセキュリティーが強化されました。
部屋の扉には、鍵穴や引手はありません。
スタッフの認証カードをリーダーにかざすと、自動ドアが開く仕組みです。そんな未来的な開閉方法のドアですが、自動ドアの駆動には、一昔前のエアーシリンダーを採用しています。
SF映画の宇宙船の扉などが開くときに「プシュー」といいながら開くやつです。
もちろん、“プシュードア”はクライアントの要望であったわけですが、これが思いのほか難しい代物でした。
先ず、モノがない。コンプレッサーが必要。エアー配管が必要。そしてプシューという音を強調させたい・・・などなど。
ちょっと前までは、工場の扉などに普通に使われていたものが、今ではほとんど電気モーターによるドアエンジンに置き換わっているので、今時の自動ドアの音は“プシュー”ではなく“ウィーン”。宇宙船の扉がプシューという音と共に開くのは、ノスタルジックな未来感なのかもしれません。
それでも、出来上がった自動ドアはなかなか面白いものになりました。
協力してくれた自動ドアメーカーも、かなりレアな依頼ということで、一緒に面白がって協力してくださいました。
駆動部は露出にして仕組みが分かりやすく見えるようにしています。
プシュードアを採用してみて感じた事は、知らず知らずのうちに、建築にはブラックボックス的な部分が増えていて、こういうものを一から考えることが少なくなっているなということ。“仕組み”がわかれば、次の想像力につながります。よい経験をさせて頂きました。