時代設定は1900年代初頭のアメリカNY。
Andy(くま)は、友人から古いシアターを譲り受け、その場所でたった一人の新聞社
「The Andy Times」を設立、仕事をしていました。
1919年「禁パン法(贅沢なるパンは製造、販売禁止)」が発令されたことから、
グルメだったAndyは「speakeasy(もぐりの酒場)」のようなパン屋をつくることを決意。
こうしてできたパン屋が「TENTH BEAR ~like speakeasy ~」なのです。
ここまでのストーリーでも十分面白いのですが、店主のコンセプトは当時の時代背景のリサーチはもちろん、Andyの生い立ちまで、細部に渡り並々ならぬ妄想力で、ほんとに楽しいものでした。
打合せはまるで物語の舞台をつくる感覚。まさにシーンデザインです。
今年の1月、最初に相談を受けた時のペーパーには、次のように書かれていました。
急激に豊かになる時代。混乱する激動の時代。活気のある時代。自由な時代。
『禁酒法』ならぬ『禁パン法』(ぜいたくは敵だ!的法案)が制定された。
一攫千金を狙う人々、
したたかに成功を夢見る人々、
人種差別で苦しみつつも、楽しく生きようとする人々、
堅実に普通に暮らし小さな幸せに満足する人々、
自分の才能を開花させようと意気込む人々、
が、同じ街で生活している。そんな街の一角で・・・
表は『新聞社』、裏では『パン屋』を営むのが『TENTH BEAR ~like speakeasy~』
店主は「Andy」。戦争へ行って帰ってきた。何かを失ってしまった目をしている。
『新聞社』は・・・真実を民衆に伝えたいという想いから。
『パン屋』(speakeasy)は・・・こっそりとパンを販売する。
『禁パン法』を無視して、美味しいパンをこっそり販売したいと考えている。
「美味しいものは食べねばならぬ」が信条。
この世界観をどう現実に落し込むことができるか。
設計者としてもとてもわくわくする試みとなりました。
そして、施主のお父様が、生前新聞記者で世界を飛び回っていた事や、
実家の蔵から見つかったアンティークの品々をディスプレイに活用するなど、
これまでの施主の実生活での出来事が、
この店づくりのためにあったのだと思えるくらいの伏線回収の仕方は、ドラマのようでした。
妄想だけど、現実の生活とリンクする部分をちゃんと持っている。恐れ入りました。
きっと、そこにAndyがいると錯覚するくらいの空間が出来上がったと思います。
是非、多くの人にAndyの想いが届きますように。
「美味しいものは食べねばならぬ」
施 工: | 株式会社 金子建設 |
撮 影: | coji_n |