パティーナ
一般的に建築(ほとんどの商品)は新品の時が一番その価値が高い。
使い始めることによってその価値はどんどん漸減していく。
特に中古住宅の価格査定はその築年数によって、非常に大雑把に行われているのが実情だ。
例えば築10年で半値、25年でゼロといったような。。。
しかし、もともと建築物は、安全・安心はもちろん、長い歴史と風土に培われた伝統や文化、デザインや芸術性が求められ、品質が高ければ100年以上に渡って使い続けることができるものである。“古くなる”と言ってしまったらそれまでだが、古くなるという事自体に新しい価値を見いだすことはできないだろうか。
デザインの世界では“PATINA”(パティーナ)という言葉がある。
「経年変化による味わい」と訳されるこの言葉は、完成品から時間を経ることで獲得するデザインのことだ。
汚れる、酸化する、色褪せる、縮む、伸びる、ねじれる、日に焼けるといった退行現象がデザインとして素敵だと感じること。最近の経済や社会が直面している問題をある意味表しているのかもしれないが、わび、さびに代表される日本人の美意識には案外受け入れられやすい感覚だとも思う。
ただし、パティーナは単に“古い”ということではない。
写真は現在シーンデザインで、住宅の床材として検討中のフローリング。新品のナラフローリングであるが、塗装にこだわり、まるで長年丁寧に磨き込まれ、大事にされてきた床板のような深みのある艶を出すことで、新築の時から既に長い時間の経過を感じさせるデザインを目指している。わざと傷をつけたり、汚してユーズド感を出すような特殊塗装ではない、まさにパティーナを模索中だ。
少しずつではあるが、パティーナという感性(実は本来日本人が持つ美意識)をユーザーと共有していくことができれば、きっと建築の価値とともに大事にされ、その寿命を長くすることできるのではないか。そんな“古美る”(ふるびる)ものをつくっていきたいと思う。