2023/01/02
磯崎新の東京都庁のコンペ案
昨年、12月28日に建築家の磯崎新さんが死去した。
写真は、磯崎新の東京都庁のコンペ案。
コンペは、磯崎の師匠である建築家、丹下健三(当時の都知事の後援会長)の案が選ばれ、超高層の都庁舎が建設され現在に至っている。
この時、磯崎は高さを競う高層ビル群の中で最も低い建物を目指すというアイデアを出し、丹下健三をはじめとした超高層ビルの新都庁案に対してのアンチテーゼを、唯一の低層案として提出し、みごと落選したが、磯崎は、「庁舎は市民を見下ろすものであってはならない」と言ってのけた。
内部空間においても、もはや庁舎としては他者となってしまっている市民の視線をアトリウムに導入することによって空間的編成を行っている。
建築に一つの閉ざされた系として内部に支配的な論理を貫通させるようなシステムは、ひたすら自己の内部にだけ向けられることになるが、アトリウムはそういった状況を打破することに大きな役割を担わされていた。
もし、磯崎案が採用されていたら、都はどう変わっていたか。
いづれにしても、自分にとっては刺激的なエピソードで、ことあるごとに思い出す出来事だし、考え方に大きな影響をいただいた。
ご冥福をお祈りします。
ちなみに、作家の荒俣宏は、新宿という土地にいちばんベストな風水建築は土性と金性と述べた上で、プラットホームのような台形か丸い頭を持つビルとし、磯崎案が新宿という土地を栄えさせる案と紹介している。一方で丹下案は、地元のエネルギーを一気に吸い上げ都庁だけ強力にしてしまう相であると述べている。