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2021/07/30

小さな文化とコロナ

今日、謡の先生が逝去されたとの連絡をいただきました。
謡とは、能楽の声楽(言葉・台詞)にあたる部分のことです。
長野の北信地方では冠婚葬祭、宴会などの席でも、一般人が謡を“お肴”として披露する「北信流」がさかんでした。
建設業界では、建前の時など、大工さんが謡や木遣りを謡う習慣が少し残っていることもあって、自分も十数年前から謡を習い始めました。
最初は、同じ日本語なのだろうかと思うくらい聞き取れない謡も、練習や聞いているうちに意味や謡われている情景が思い描けるようになり、一緒に稽古をしている80代、90代の方と世代を超えたコミュニケーションが取れた気がして嬉しかったものです。
そんな謡の稽古も、去年からのコロナ禍で中断していて、先生やみなさんとお会いする機会も無くなってしまって、どうしているだろうと思っていたところの訃報でした。
すべての事柄には終わりがあることは仕方のない事だけれども、コロナ禍は、気持ちの準備ができないままに、継承の機会を与えずに、いろいろなものを静かに奪っていきます。

同じように、世界中いたるところで、なんとか細々と繋ぎとめていた文化は、このコロナ禍で、ことごとく断ち切られているのではないだろうか。
本当に、もうもとの世界に戻れないのだろうなと、あらためて寂しい気持ちです。

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