2018/09/26
広い敷地に小さな家
昭和28年3月1日発行 婦人倶楽部三月号付録
「住宅の模範設計集」~計画から竣工まで 建築一切の親切な相談書~
古本屋で見つけた、実に65年前の本です。設計プランはもちろん、設備、家具、庭、メンテナンス、申請、見積もりについても一通り網羅し、大工道具の鉋やのみ、金槌の選び方まで丁寧に書かれています。建築のプロの実用書としても十分通じるような内容で、当時のご婦人方が、これを読んでいたのだとしたら、いわゆる“施主”の建築の造詣の深さは、現代のクライアントとは比べ物にならないくらい高かったのではないかと思えます。
設計も古臭いといったものではなく、みんな斬新で、なかなか興味深いプランばかり。むしろよく考えられています。そして、何より驚きなのが、掲載されている一番大きな家の延床面積が25坪(しかも家族4人を想定)だということ。最小は、なんと7.5坪。時代が違うとはいえ、庶民の住宅は25坪でも大きい方だったという感覚がかつてあったことは面白い。現代人はモノを持ち過ぎなのだろうか。
建材の高騰や人手不足の中、これから建築費はどんどん高くなるでしょう。逆に土地は安くなる傾向ですので、個人がなんでも所有することやめ、家電は薄くコンパクトになれば、これからの住宅は65年前の様に、どんどん小さくなっていくかもしれません。広い敷地に小さな家。一周まわって新しい暮らし方だと思います。