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2018/09/29

エイジング塗装

エイジング塗装の前(上)と後(下)

シーンデザインでは、特に商業施設に於いて、最後の仕上げにエイジング塗装を施すことがあります。写真は、先日お引渡ししたテンスベア(パン屋)の、エイジング塗装の前と後です。一般にエイジングとは「時を経る」という意味なので、美容や医学の分野ではアンチエイジング(抗老化)という言葉をプラスの意味として使っています。

さて、建築においては、アンチエイジング(経年劣化しない、少ない)という、うたい文句の建材は多く、一方でエイジング(経年変化)を良しとする美意識もあります。どちらが正しいということではありませんが、私は後者に時間の厚みを感じる分、親しみとストーリーが生まれやすくなるので好きです。

本物の経年変化ではないエイジング塗装を偽物だという方もいます。しかし、エイジング塗装は、ただ一様に汚しているわけではなく、観察や経験に基づき、とてもよく考えられた技術でもある事を知れば少し認識も変わります。例えば、毎日の掃除でどこが拭き取りづらい部分なのか、毎日の使用でどこが傷付きやすい場所なのか、どこに錆が浮き出てくるのか、使われ方や客層によっては、たばこのヤニなど付着するのではないか・・・などなど。実は、設計者以上にそこでの使われ方や起こり得る状況を想像できなければできない塗装なのです。そして、そのエイジング塗装が施された空間で、体験者に親しみや感動などを与えることができたのなら、それは立派なエイジング塗装の機能です。
エイジング塗装のように、形態や色、材質だけでなく、建築の中に含まれた人々の身振りと結びついた雰囲気がもつ効果にもっと目を向けていきたいと思っています。

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