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2021/10/14

丁度よい程度

現在進行中の現場での施工者とのやりとりで、昔の自身のブログ記事を思い出しました。
水切りひとつのディティールにも思想が必要だと思う。

目指している性能、機能に対して、近視眼的にある一部分だけにバランスを欠いた過剰なゼロリスクを求めだすと、全体のデザイン(設計)が大きく壊され、魅力が半減してしまう。
立場の違う関係者同士で調整しながら、丁度よい“程度”を探ることは、なかなか難しい事ではありますが、その作業そのものも建築する行為の大事な部分であるとも思うので、根気強く進めていかなくては。

以下、約14年前のブログを再掲します。

水切りに思うこと

(写真は)約100年前に建てられた古い建物の窓下の水切り。

古美(ふるび)た感じがとても良い味をだしている水切りのデザインだが、現代住宅の窓下水切り端部の処理としてはNGかな。

気密性や断熱性を確保するためにアルミサッシを使用する現代住宅には、窓下に汚れが発生している事例を多く見かける。
大気中の汚染物質が窓際のシーリング材に付着し、雨水によって窓の水切り端部から流れて下部の壁面を汚す。
シーリングを多用するサッシの採用はこの汚れが発生しやすい。

だから、近年の水切りは端部を折り上げ、耳をつけて立ち上がりをつくって水が壁面を汚さないような処置をする。

100年前の建物に比べたら、現代住宅は桁違いの気密性能や断熱性能を備えるものとなった。
快適な環境性能を維持するためには、最近のサッシ水切りのように、その性能を確保する新たな部材を付加したり、形状を変えたりする必要がでてくる。
さらにその部材の性能を確保するために・・・議論は限りなく続く。

この水切りは、そんな難しい議論と遠くかけ離れたところから「考え過ぎだよ」と笑っているかのようだ。
建築がもっとおおらかで、楽しいものであった時代のディティールは見ていても心地よい。

そして、この建築が風雨にさらされながら100年ここに建ち続けられた理由を、僕らはもっと考えなければいけないのではないかと思う。

 

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